禁煙指導
禁煙指導
体に悪いことはわかっていてもタバコをやめられない。そんなお悩みはありませんか?禁煙指導とは、喫煙者の禁煙をサポートするための外来です。
医療機関で禁煙する理由は、タバコに含まれているニコチンに依存性があるためです。喫煙する方の多くは、ニコチンに依存してしまうニコチン中毒という状態にあります。この状態をニコチン依存症と診断し、疾患として医療機関で禁煙治療の保険診療が実施されています。
禁煙指導では、医師による指導やアドバイスに加えて、禁煙補助薬の処方を受けることができます。禁煙補助薬を用いた治療では禁煙中の禁断症状(医学的には離脱症状といいます)が緩和されるため、自力で禁煙するよりも比較的楽に禁煙することが可能となります。
※禁煙指導は予約制となりますので、事前にお問い合わせください
禁煙が難しいのは、ニコチンに対しての依存と、喫煙習慣による心理的な依存を同時に克服していかなければならないためです。
ニコチンの身体的依存は、ニコチンが脳の中の中枢神経系に作用することで起こると考えられています。しばらく続けてタバコを吸っていると、脳内にニコチン受容体が出現してきます。このニコチン受容体は、ニコチンを受け取り脳内に快楽を感じるドーパミンを放出します。このときに「気分が落ち着く」「ストレスがとれた」という感覚を覚えます。これを繰り返すうちに、ニコチンがないとイライラや落ち着かないといった離脱症状が現れるようになります。これがニコチンの身体的依存です。
ニコチンの心理的依存とは、仕事や家事などが一区切りついた時に、習慣として喫煙してしまう状態のことです。タバコを吸ってよかったという記憶や身についた癖、習慣などを心理的依存といいます。
禁煙はこの身体的依存(ニコチン依存)と、心理的依存(生活習慣)を克服することがポイントとなります。禁煙を開始すると、ニコチンの離脱症状が起こるため、禁煙補助薬によってその症状を緩和します。心理的依存の克服過程では、口寂しさや、手持ち無沙汰、あるいは喫煙をしてしまうのではないかという不安などが生じてきます。ここでは禁煙の意思をご自身で強く持つことも大切ですが、生活習慣の見直しや医療者による具体的なアドバイスを受けていただきます。
このようにして2つの依存を克服していきます。
保険診療で使える禁煙補助薬にはニコチンパッチ(貼り薬)とバレニクリン(飲み薬)がありますが、前者よりも後者を使用したほうが論文報告などから禁煙成功率が高いとされていますので、当クリニックでは原則飲み薬の治療を行います。これらの禁煙補助薬を用いた治療は、禁煙後のニコチンの離脱症状が緩和され(残念ながらゼロにはなりません)、自力で禁煙するよりも比較的楽に禁煙することができます。飲み薬はタバコを吸った時の満足感を抑える作用もあり、喫煙してもおいしく感じなくなります。
2020年12月より、禁煙治療用のアプリが保険適用となりました。現在は当クリニックでは使用できませんが、いずれはアプリも使用して禁煙のお手伝いをしたいと考えています。
タバコは肺がんや咽頭がんをはじめ、さまざまながんのリスク要因であり、がんで亡くなった方の男性で約30%、女性で約5%がたばこに原因があったという報告があります。また、慢性閉塞性肺疾患など呼吸器の病気や心筋梗塞・脳梗塞などの血管がつまってしまうような疾患とも関連が強いことがわかっています。さらには妊婦さんが喫煙することで早産・低出生体重・胎児発達遅滞・乳幼児突然死症候群などのリスクが上昇します。また、骨粗鬆症・白内障・大腿骨頸部骨折などのリスクもあまり知られていませんが高まります。禁煙をすることで、これらのリスクが減少することは間違いありません。
禁煙治療に保険を適用するためには、下記の条件を満たすことが必要です。
(1)下記のニコチン依存症テストで5点以上の方
設問内容 | はい 1点 |
いいえ 0点 |
|
---|---|---|---|
問1. | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか? | ||
問2. | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか? | ||
問3. | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコが欲しくて欲しくてたまらなくなることがありましたか? | ||
問4. | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか?(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) | ||
問5. | 問4の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか? | ||
問6. | 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか? | ||
問7. | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? | ||
問8. | タバコのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? | ||
問9. | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか? | ||
問10. | タバコが吸えないような仕事や付き合いを避けることが何度かありましたか? |
出典:厚生労働省保険局医療課長通知 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について- 保医発0304第3号(平成28年3月4日)より改変
(2)「1日の平均喫煙本数」×「これまでの喫煙年数」=200以上(35歳以上の方)
※35歳未満の方に対しては、喫煙本数や喫煙年数によらず保険適用となります
(3)直ちに禁煙することを希望されている方
(4)禁煙治療について説明を受け、禁煙治療を受けることに文書で同意された方(問診票への記入)
※過去に健康保険等で禁煙治療を受けたことがある場合、前回の治療開始日から1年以上経過していないと保険適用になりません
※2020年度から加熱式タバコ使用者も健康保険による禁煙治療の対象として認められています
1
ニコチン依存症テストで診断し、保険適用の可否を確認します。
2
息に含まれる一酸化炭素(タバコに含まれる有害物質)がどの程度かを確認します。
3
「禁煙開始日」をご相談しながら決め「禁煙宣言書」を作成します。
4
あなたの健康状態やこれまでの喫煙歴、禁煙歴などをお尋ねします。ニコチン切れ症状への対処法などを一緒に考えましょう。
5
禁煙補助薬を内服できるかどうかの確認と、薬の特徴および使い方をお伝えします。
12週間にわたり、計5回の診察を受けていただきます(2週間ごとに来院いただきます)。各診察時には息に含まれる一酸化炭素の濃度を測定します。また、診察の際いろいろなアドバイスを受けていただくことで、禁煙が成功しやすくなります。治療期間中に、不安や気になる症状などがありましたらお気軽にご相談ください。